とある元SEの思考を探る

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水素社会は来ないが水素はいる!

前回の記事では、水素社会は絶対こない!と断言しました。

 

では、どういう社会が来るのか。

水素がエネルギーキャリアとしてではなく、何が石油や天然ガスに代わるエネルギーキャリアとなるのか。

 

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私は、メタンだと思っています。

それは、天然ガスと同じじゃないかと言われるかもしれません。私がここでメタンと言っているのは、人工的に作られたメタン。言ってみれば人工天然ガスです。

 

どのようにして人工天然ガス(メタン)を作るのかというと、いわゆるサバチエ反応。

二酸化炭素と水素からメタンを製造します。

CO2 + 4H2 = CH4 + 2H2O

 

この反応は、もともとサバチエによって20世紀初頭に発見されたものですが、大きな温度差が必要となるなど課題が多くありました。確かに、この反応は8電子反応であり、反応のプロセスは極めて複雑であることが容易に推察されます。温度の条件、触媒の条件、圧力等、様々な要素が絡み合ってきます。実用化に耐えうる速度でメタンを製造するために克服しなければならなければならない課題が多くある反応であると言えます。

 

しかし、近年の研究によって、そうした課題が解決に向かいつつあります。

例えば、橋本功二氏(東北大学名誉教授・東北工大名誉教授)は、古くから二酸化炭素のメタン化の研究を行っており、パイロットプラントの建設まで行っています。これらの技術は、アタカ大機(現日立造船)が実証・開発を進めています(参考)。

また、今年に入ってからも、静岡大学の研究グループが、二酸化炭素と水素から一瞬でメタンガスにする技術を開発したと報道されました。

www.nikkei.com

 

ヨーロッパでも、水素そのものではなく、二酸化炭素と反応させることによってメタン化して利用する方法の検討がされています。

www.nikkei.com

 

こうしたメタン化の技術はパイロットプラントがすでに建設されているなど、実用化一歩手前まで来ており、近い将来の実現が現実のものとなってきています。

 

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そして、メタンであれば、水素と違って新たなインフラを作る必要はありません。天然ガスと同じなので、気体のままであれば、天然ガスパイプラインがありますし、LNG液化天然ガス)にすれば、LNGタンカーが使えます。日本の都心部では都市ガスのインフラも整っています。

 

二酸化炭素と水素からメタン化する。

 

これは、メタンの製造と水素の製造といった部分は新たな初期投資が必要となりますが、それ以外のインフラの部分は既存のものが使えるのです。メタンは、水素と比較して優秀なエネルギーキャリアなのです。

 

そして、注目すべきは、メタン化の原料に二酸化炭素という地球温暖化の悪玉として祭り上げられてしまっている物質を必要とすることです。そう、地球温暖化にも優しいのです。

いやむしろ、昨今の二酸化炭素濃度の増加は、地球からのメッセージなのかもしれません。

 

化石資源はいずれ枯渇するぞ。それに代わるエネルギー源は二酸化炭素だぞ。

 

と。私は、二酸化炭素こそがエネルギー問題を解決する救世主であると強く思っています。

 

 

今回は、エネルギーキャリアは水素ではなくメタンであるということを紹介しました。しかし、まだまだ問題はあります。二酸化炭素はそこらじゅうにたくさんあるとして、メタン化に使われる水素はやはり製造しなければなりません。前回の記事でも紹介したように、現在の水素は化石資源依存。これでは意味がありません。

次回は、その問題の解決方法について述べたいと思います。

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