昨日の記事、「分かりやすいの罠」にて、デフレとインフレについて説明をしました。そこでは、デフレとインフレ、どちらが良いのかの結論は書きませんでした。
今日は、デフレか、インフレか、はっきりと答えを出してみたいと思います。
ズバリ、結論から言いますと、デフレか、インフレ、どちらがいいのかと言えば、
インフレ、になります。
なぜか。その理由をなるべく分かりやすく説明していきますね。(分かりやすいと思った方は気を付けてくださいね。)
さて、まずは復習。
デフレとは、物価が持続的に下落することでした。
インフレとは、物価が持続的に上昇することでした。
そして、インフレがひどくなると、せっかく貯めたお金が、ただの紙切れ同然となってしまうということも説明いたしました。
では、デフレだと、お金はどうなるのでしょうか?
デフレはインフレの逆。お金の価値がどんどん高まっていくのがデフレなのですね。
1万円でリンゴが200個買えたとすると、リンゴ1個の値段は50円。それがデフレで20円になったとすると、1万円でリンゴは500個買うことができます。リンゴ1個の価値は変わりませんから、1万円の価値があがったということになるわけですね。
この現象、みなさんはどう思われますか?
貯めたお金の価値がどんどんあがっていく。これがデフレ社会です。デフレが進めば、究極的には、お金を持っている人は働かなくても良い社会になります。
そして、それはつまり、先にお金を貯めた人が得する社会でもあります。昭和の高度成長期にしっかりと稼ぎ、お金を貯めてきたご老人。貯金だけではなく、年金もしっかりと受給できる方にとっては、デフレというのはパラダイスなんです。お金の額面は変わらなくても、そのお金で買えるものはどんどん増えていくのですからね。
先に稼いだ者が有利な社会。それがデフレ社会です。
そう、逆に言えば、これから社会にでる若者にきわめて厳しい社会。それがデフレなのです。
昨日の記事で、デフレ下では、物価が下落し続けるので、消費者は買い控えを選択しやすくなると書きました。どうせ価格が下がるのなら、下がってから買おうというのが通常の心理ですよね。生活必需品は買わざるを得ないかもしれませんが、嗜好品などは買い控えるでしょう。その結果、ものが売れなくなるのがデフレ下の世の中なのですね。
そんな社会では、なかなか会社も人を雇おうとは思いません。だからこそ、若者は就職難になる。
それを如実に表しているのが次のグラフです。
横軸に物価上昇率(インフレ率)、縦軸に失業率をとったグラフです。物価上昇率が小さいと、失業率が上昇しているのがわかります。逆に物価上昇率があがると、失業率は小さくなっています。これは、マクロ経済学ではフィリップス曲線と呼ばれる有名なグラフです。
失業率が高くなる。ただその点をとってみても、デフレというのは良くないことなのですね。
そしてもう一つ。物価上昇率は、実は実際の値よりも高くなる傾向があるということです。物価上昇率の指標に消費者物価指数というものがあります。これは、生活する上で必要となる重要な品目を何品目かをピックアップ(2010年基準だと588品目)して、その価格で物価が上がったか下がったかがわかる指標です。この品目は5年ごとに見直され、今年はちょうど改訂の年です。
5年前を思い出してもらえばわかるように、当時と今では売れているモノは違います。5年前には売れていたものが、今ではあまり売れなくなっている。そうすると、昔はコモディティ化の影響で価格が安くなっていっていたのが、それが落ち着き、場合によっては売っても儲からないから少し高めの価格に設定する。そんなことがあるなどして(実際はもっと複雑)、消費者物価指数というのは実際の値よりも、少し高くでるわけです。
だからこそ、数値上の物価上昇率は正でも、実際の経済がデフレになっていないように、少しインフレにしておく。それが(消費者物価指数から求めた物価上昇率において)インフレが良いという理由です。
いかがでしょうか。少し細かい話も出てきましたが、まとめるとこのようになります。
デフレ社会は、これから社会に出る若者にとって厳しい社会
デフレ下では、お金を持っている人は何もしなくても買えるものが増える
インフレでは、失業率が下がるので、これから社会に出る若者にとって(デフレよりは)優しい社会
では、デフレよりもインフレが良いのは分かった。ではどうすればいいのか?デフレとかインフレってコントロールできるの?という疑問が湧いた人もいるかもしれません。
また、少しニュースを見ている人ならば、日銀総裁が白川総裁から黒田総裁に替わって、2%のインフレ率を達成するぞー!って言ってるけど、そんなことできるの?総裁が変わっただけでこれまでデフレで苦しんできたのに簡単に変わるの?という疑問もあるかもしれません。
このあたり、また次回以降紹介したいと思います。
本日も、ここまで読んでいただき、有難うございました。