一昨日の記事、「デフレとインフレ、どっちがいいの?」の続きになります。
前回は、インフレとデフレ、結局どっちがいいの?ということで、はっきりと、デフレより、インフレの方がましだと述べました。そして、デフレはこれから社会に出て働こうとする若者にとって、極めて厳しい社会だということを書きました。
では、こうしたインフレやデフレはコントロールできるものなのでしょうか?もっというと、インフレやデフレの指標である物価上昇率、つまり、消費者物価指数の値はコントロールできるのでしょうか?
この点に関して、説明したいと思います。
今回も、結論から言うと、インフレやデフレはある程度はコントロールできるということです。
たとえば、日本の中央銀行である日本銀行は、黒田総裁、岩田副総裁にかわってから、2%の物価上昇率となるように政策を行うインフレターゲット政策を行っています。このインフレターゲット政策、なにも2%ぴったりじゃないとだめというわけではなく、そこには、2%±0.5%といった、幅が持たせてあるはずです。
この幅の範囲であれば、ある程度コントロールできますよということです。
その証拠に、過去の各国のインフレ率を比較してみましょう。
諸外国を見てみると、リーマンショックなどの大きな変動要因はありますが、おおむね、2~4%の間におさまっています。
一方で、日本も黒田総裁就任前は、-1~1%に収まっているのがわかります。値の差はあれ、日本も欧米と同じように、インフレ率をコントロールしてきたという事実があります。少なくとも10%以上の高インフレは、オイルショックなどの外的要因が無い限り、ありません。
その証拠に、各国の中央銀行はインフレターゲット政策を行っています。ヨーロッパのECB,イギリスのBOEは昔からとってきましたし、2012年には、アメリカのFRBが、そして、世界から後れをとりながらも日本銀行も2013年にインフレターゲット政策を採用しました。
これは、各国の中央銀行がインフレ率をコントロールすることができるからこそとることができる金融政策です。
では、どのようにして、インフレ率をコントロールするのでしょうか。
さて、物価を決めるのはなんでしょう?
中学の公民では、よく、需要曲線や供給曲線を習います。
需要曲線は、需要と価格の関係を表すグラフで、需要が多いほど、みんなが欲しがるので価格は上がり、需要が少ないほど、誰も買わないから価格が下がることを表す曲線です。
一方、供給曲線は、供給者側からみたかかくで、供給量と価格を表すグラフです。高い値段だったら、たくさん売りたいし、あまり安い価格では売りたくないので、低価格では、供給量が下がるという曲線ですね。
この二つの曲線の交わるところが均衡価格といってそのモノの値段が決まると。
そのように中学の公民では教えています。
しかし、これは、ミクロな目線の話です。ある特定の商品であれば、当てはまるかもしれません。
物価はマクロな指標。一つ一つの商品なんて気にしてはいけません。
そして、価格を決めるのは、商品なんかじゃないということを頭にたたき込んでください。
価格を決めるのは、そう、お金です。
前回の記事では、リンゴでインフレやデフレについて紹介しましたが、昔も今も、リンゴ1個の価値は、基本的には変わりません。もちろん、腐るので、時がたてば特定のリンゴの価値は下がるのですが、そのことを言いたいのではありません。わかりにくいという方は、違うものでもかまいません。たとえば、えんぴつ。古くからあるえんぴつですが、えんぴつ1本はいつまでたってもえんぴつ1本です。
だけれども、えんぴつの値段は時がたてば変わりますよね。
なぜでしょうか?
それは、お金の価値が変わるからです。1万円の価値が変わるからです。
たいていの社会では、ややインフレにするのがふつうですから、1万円の価値は、、どうなりますか?上がりますか?下がりますか?
そうですよね。1万円の価値は下がりますね。だからこそ、たくさんのお金を払わないとえんぴつ1本買うことができなくなるわけですね。
そうです。1万円の価値を、人為的に下げたり、上げたりすることでものの値段すなわち、物価を変化させることができるのです!
では、どのようにして1万円の価値を変化させればいいのでしょう?
ここで基本的な原理。
多いモノは価値が少なく、少ないモノは価値が高い。
これを考えます。つまり、1万円がたくさん社会にあれば、その1万円の価値は下がっていく。そして、1万円なんてものはただの紙切れですから、いくらでも作ることができる。
さて、1万円を作っているのはどこですか?そうですね。実際に製造しているのは、国立印刷局ですよね。
このお城誰が作ったかわかる人ー? 大工さん!
という幼稚なやりとりを思い出すまでもなく、製造した人はあまり重要ではありません。城を建てろと命令した大名が大事なのであって、1万円を製造しろーと指示した機関が大切です。その機関とは、そう、我らが日本の中央銀行、日本銀行ですね。その証拠に、1万円には日本銀行券(にっぽんぎんこうけん)と書かれていますね。
日本銀行は、1万円を作る量を変えることで、物価調整することができます。インフレ率2%を目指して金融政策を行うのであれば、現状が1%しかなければ、1万円をどんどん刷って、市場に供給して物価を上昇させ、4%、5%という高インフレになれば、1万円を作るのをやめ、市場から1万円を買い取って、市場に出回っている1万円の量を少なくします。これが、金融政策です。1万円を市場に供給することを金融緩和、逆に、1万円を市場から買い取って、市場に出回る1万円の量を減らすことを金融引締めと言います。
日本銀行が、1万円を市場に供給する際には、何かを買う必要があります。良く買うのが国債です。いわゆる、国債の買いオペです。国債とは日本政府が国家運営のために足りないお金を民間から借りて発行している債券ですね。国家がバックに突いているので、非常に信頼性の高い債券ですし、特定の株や社債などを買うと、日本銀行という公的な機関が特定の企業に入れ込むことになるので、あまりしないわけですね。ただ、最近ではREITやETFなどの国債以外の債券も買うようになっていますが、お金を市場に供給するということに違いはありません。
逆に市場に出回る1万円の量を減らすためには、売りオペをすれば良いわけです。もういらなーいと言って、売っちゃうわけですね。そうすれば、市場に出回っている1万円をまた日本銀行に戻すことができます。
このようにして、中央銀行は、物価を調整することができます。
以上が、インフレやデフレがコントロールするために、日本銀行が行う金融政策です。
こうして、物価上昇率は調整でき、それが故に、各国に中央銀行は、インフレターゲット政策を採用しているのですね。
本日も、ここまで読んでいただき、ありがとうございました。