とある元SEの思考を探る

ひょんなことからとあるICT企業ではたらくことになったなんちゃって元SEがしたためるブログ。主に、政治・経済・社会問題・日常の出来事について発信していきます。お読みいただけたら、感動にむせび泣くほど嬉しいです。よろしくお願いします。


一票の格差から考える3つのこと①

もうすぐ統一地方選ですね。神奈川県では26日から県知事選が始まっています。知事選が始まると市議選や県議選の候補予定者の政治活動ができなくなるので、一時的に駅前は静かです。

 

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(写真は、2012年12月、不在者投票を行った時のもの。個人情報保護のため、一部加工してあります)

 

さて、昨年末に行われた衆院選

このときの1票の格差が2.13倍であり、これが違憲だとして選挙が無効を求めた訴訟が全国各地で行われています。19日の東京高裁は「合憲」、名古屋高裁や大阪高裁は「違憲状態」などの判決を出している中、福岡高裁が25日に「違憲」だと判断したとの報道がありました。

 

このニュースに関して、

1.裁判所の問題点

2.地方の意見を聞くために一票の格差は仕方がないのか

3.一票の格差がなくなったとしても、格差は存在する

の3つの観点から記したいと思います。2、3は次回以降になりますが、まずは1.裁判所の問題点からです。

 

1.日本の裁判所の問題点

違憲違憲状態の違いはなんなのでしょうか。弁護士の白川氏は自身のブログで、違憲状態とは

「まだ違憲ではないが、
そのまま放っておいて不平等を是正しないと、
違憲になる状態」

 を指し、いうなればこれは「合憲」を意味すると指摘しています。

一方、「違憲」とはその名のとおり違憲。はっきりと黒を宣告しているので、福岡高裁のだした「違憲」判決は、今の所出されている中で、最も重い判決だと言えます。ただし、選挙無効は棄却したということなので、違憲だけれども選挙は有効だよというなんじゃこりゃ的な判決なわけですね。一票の格差は2.13倍。一票の重さに差があってはいけないので、違憲かつ選挙無効、そのような判決が出てほしいものです。

それではなぜ、高裁によって判決が違うのでしょうか。当然、対象となる小選挙区が異なるといったこともあるのかもしれませんが、私はそれとは別に、ある理由があると私は思います。まず、裁判所の組織はご存知でしょうか。一番トップに最高裁判所があって、その下に高裁、地裁があるわけですが、やはり判決に大きく影響するのは裁判官の人事です。一番トップは最高裁判所ですから、みな最高裁判所判事を目指すわけですが、当然、だれでもなれるわけではありません。最高裁判所判事になるためにはいわゆる“エリート”でなければなりません。ここでいうエリートとは、最高裁判所の事務総局の意向に沿った判決を出す裁判官を指します。この最高裁判所の事務総局は近年、保守的で、たとえば内閣に逆らうような、波風をたてるような判決を極力嫌う傾向があります。一票の格差で「違憲」という判決を下すのは、波風を立てることになります。東京高裁の裁判官は、将来最高裁判所判事になる可能性のある人たちです。だからこそ、19日の東京高裁の判決では「合憲」の判決が出たのだろうと思います。そして、他の高裁に先駆けて「合憲」の判決を下すことで、最高裁判所事務総局の意向はこれですよという指針も提示されたことになると言えます。東京高裁以外の高裁の裁判官の多くは、そこでストップ。最高裁判所判事になれる可能性が低い人ですから、最高裁判所の意向に反した、思いがけない判決がでたりするそうです(瀬木比呂志「絶望の裁判所」)。

なお、東京高裁は25日、19日の訴訟とは異なる弁護士グループの判決で「違憲状態」という判決を出しています。名古屋や大阪の高裁が「違憲状態」と判決を出す中で「合憲」とするのはさすがに無理があると思ったのかもしれません。

 

このあたりの、裁判所の問題点については、元裁判官の瀬木氏の「絶望の裁判所」という書籍が詳しいです。

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私は読んでいませんが、近著では「ニッポンの裁判所」もあります。

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それでは、この記事も2600文字を超えてしまったので、このあたりにいたします。次回以降、

2.地方の意見を聞くために一票の格差は仕方がないのか

3.一票の格差がなくなったとしても、格差は存在する

についても書こうと思います。よろしくお願いします。

 

※一部、憶測で書いている部分があります。正確な情報に関しては読者の皆様の責任で収集して下さい。

 

(つづく)