とある元SEの思考を探る

ひょんなことからとあるICT企業ではたらくことになったなんちゃって元SEがしたためるブログ。主に、政治・経済・社会問題・日常の出来事について発信していきます。お読みいただけたら、感動にむせび泣くほど嬉しいです。よろしくお願いします。


「公平性」を担保できない無償というスキーム

大阪市が『平成 29 年度 大阪市プログラミング教育推進事業』の実施にかかる協力事業者の募集要項を公開してネット上ではちょっとした炎上にあっています。

大阪市:平成29年度小学校段階からのプログラミング教育の推進に当たり協力事業者を募集します。 (…>教育委員会事務局>入札・契約のお知らせ)

たしかに募集要項には、

4 事業実施条件等に関する事項について

(1) 経費の負担
ア 事業実施にかかる人件費、消耗品費、教材費(電子機器貸与料含む)、交通費
等のすべての経費は事業者の負担とする。
イ 事業実施に必要な教育委員会所有の機器・環境は、無償で使用可能とする。
ウ 業務を遂行するために必要な経費について、本市は一切の費用を負担しない。

 とあり、確かに大阪市が一切の費用を負担しない旨が明示されています。

インターネット上では、「この世の地獄か」「どういう生き方をするとこんな思考になるのか見てみたい」といった意見が出ているようです。

 

まさしく、昨年話題となった「逃げ恥」でも取り上げられた「やりがい搾取」と言われる募集だ!ということなのでしょう。

ただ、私はそうした個人のやりがい搾取という観点とは少し異なる見方をしています。というのも、この募集が事業者に対するものだということです。 

大阪市が無償にした理由としてはJCASTニュースによると

「事前に数社にこの条件を提示したところ、『無償はいかがなものか』と言われた。ただ、特定の業者との結びつきをなくし、公平性を担保するためにも『無償』という形をとった」

 とのことだそうです。

つまり、大阪市がこれまでもお付き合いのあるICT企業(NやFやHなどのSIerも含まれると思われる)に事前に相談しているということは、今回の無償の募集に応募することで、今後のお付き合いの仕方に影響を与えますよということを意味しているのではないでしょうか。

要は、今後システム発注などの案件があった場合にこうした取り組みに対して考慮しますよと。例えば、プログラミング教育の導入に伴い、新たなパソコンやロボットなどを導入するときにはその実績を鑑みますと。

しかも、今回は「無償」ということで、金額よりも内容で審査することになります。内容は数値化しにくいところですから、特定の業者との結びつきを生み出しやすい土壌であると言えます。

 

さらに、こうした行政の募集というのは通常は一般の目につきにくいということが行政がこうしたストーリーを描きやすくする一因でもあると思います。

こっそりと募集してこっそりと締め切ってこっそりと選ぶ。そのあとのお金のかかる発注の時にはその実績を加味して業者を選定する。

「無償」というのは「公平性」を担保できるようにみえつつも、その実は特定の業者と結びつくことを容易にしやすくするカラクリなのではないでしょうか。