とある元SEの思考を探る

ひょんなことからとあるICT企業ではたらくことになったなんちゃって元SEがしたためるブログ。主に、政治・経済・社会問題・日常の出来事について発信していきます。お読みいただけたら、感動にむせび泣くほど嬉しいです。よろしくお願いします。


誰も笑顔にしないクラウドソーシング

Welqの問題が発覚して、各キュレーションサイトで記事の非公開がさかんに行われている。中には一時的に非公開にし、精査をした上で再度公開する場合もあるであろう。とは言え、こうしてインターネットの情報からゴミ情報が消えていくのは非常に良いことだと思う。

www.nikkei.com

headlines.yahoo.co.jp

これらのニュースによると、キュレーションサイトの記事の非公開化は、記事のコピペだけでなく、画像の不正使用などもあるという。

昨年、東京オリンピックの盗作問題も大きな社会問題化したが、今回の騒動もそれに続く系譜だと思う。情報が速やかにアクセスできる現代では、自ら創作をするよりも、コピペしてしまった方が手っ取り早い。しかも、自分でやるのではなく、クラウドソーシングで格安で雇った人に作業をしてもらうことで、低価格で記事を量産する。記事の内容ではなく、SEO対策などのポイントをきちんとおさえて書くようにライターに指示をすれば、どれだけでたらめな内容でもGoogle先生は良質なサイトだと判断して検索結果を上位にしてしまう。

キュレーションサイトは、Googleの弱点を逆手にとって自サイトの検索結果を上位にし、アクセス数を荒稼ぎする。そこには世の中を良くしようという理念もへったくれもない。自分たちだけが良ければ良いという人たちなのであろう。

 

今回の一件で各社の対応を注視していたが、クラウドワークスは一枚上手だと思った。

クラウドソーシングサイトの大手2社といえば、ランサーズとクラウドワークスだ。今回、ランサーズは、ランサーズ経由で採用されたライターも信憑性の低い記事を大量生産させてしまったとして、品質向上委員会を設置し、管理体制の強化を行うという。

japan.cnet.com

一方、クラウドワークスの対応は違った。

私も以前、少しクラウドワークスを利用する機会があったのだが、先日のクラウドワークスからの連絡には大変驚かされた。

なんと、記事の信憑性に関する問題があるということで、監修者を紹介するというのだ。

自分たちで駄記事を大量生産させる仕組みを作っておき、そして自分たちでお掃除をする。今回のような事態は、クラウドソーシングサイトが存在しなければ起きなかったことであるから、まさしく、「自分の仕事は自分で作る」を体現したと言える。

しかし、クラウドワークスの理念は『「働く」を通して人々に笑顔を』である。

今回の一件で誰が笑顔になっただろうか。嘘八百を並び立てた記事をインターネットの大海に撒き散らして閲覧者を騙した。一番問題があるのはいうまでもなく、キュレーションサイトの運営者であるが、運営者にも笑顔を届けられなかった。直接的な問題となっていないサイトの運営者にも、過去の記事をチェックして問題のあるものは非公開にするという余分な仕事を増やしてしまった。

笑顔になったのは、ライターを仲介し、ゴミを除去するための監修者まで紹介することで手数料を取るクラウドワークスだけであろう。

その監修者がクラウドワークスで受注したとしても、監修した記事で何か問題があれば責任を取らされるだろう。「運営者には問題はありませんでした。監修してもらっていたので、監修者の責任です」こう言い逃れするために利用されるのであろう。発注者の品格には十分に気をつけるべきだ。

ランサーズのように過ちを認め、謙虚に品質向上に努めるのであれば、まだ許せる。しかしクラウドワークスはこうした自分たちが犯した問題ですらビジネスに変えようとする。それは商売人としては良いかもしれないが、倫理的には少なくとも私は許さない。

 

私は、クラウドソーシングというのは、働き方のバリエーションを増やすという意味では良いことだと思う。しかし、それは、発注者の働き手への敬意があってこそ成立するものだと思う。

実態は、格安で駄記事を量産するプラットフォームでしかなかった。ライターだけではない。エンジニアに関しても同様の場合があるということは、288日前に経験者が語ったブログが有名になったことからも伺える。今読み返せば、このブログの作者も今回の問題を予見していたように思える。

 

もうクラウドソーシングでお金を稼ぐという幻想はやめた方がいいのではないだろうか。誰も笑顔にならない仕組みなど存在する価値はない。

もしそれでもクラウドソーシングサービスを運営し続けるのであれば、品質が向上しつづけるために不断の努力を行うべきであろう。それは、クラウドソーシングサービス経由で生産された記事の品質だけではない。発注者の品質、発注内容の品質も含まれる。受注者は言わずもがなだ。安易に低価格の案件を受けるべきではない。そして、そうした案件は運営会社が積極的に削除していくべきなのだ。そうしないとまた同じ過ちを犯してしまう。

 

今回の件で、Googleの検索の弱点とクラウドソーシングサービスと発注者の低品質が招いた誰も笑顔にしない世界の扉を、ようやく開いたといえよう。クラウドソーシングで笑顔になれなかった人は積極的にその扉をくぐってみるのも一考であろう。