とある元SEの思考を探る

ひょんなことからとあるICT企業ではたらくことになったなんちゃって元SEがしたためるブログ。主に、政治・経済・社会問題・日常の出来事について発信していきます。お読みいただけたら、感動にむせび泣くほど嬉しいです。よろしくお願いします。


「この世界の片隅に」

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この世界の片隅に」を観て来ました。ユーロスペースでの映画は7年弱ぶりです。

昔は1階に食べ放題の店があって何回か行ったなあと感慨に耽りながらドアを開けると15:50からの会はすでに満席。立ち見になってしまうということなので、18:30からの回を観ました。

 

会場は満員。熱気を感じました。(実際少し暑い)ユーロスペースはチケット購入順に入場なので、良い席で見たい方は早めの購入をお勧めします。

客層もカップルで来ている人もいれば、男女ともに1人の人も多くいた印象です。

 

さて、実際の映画ですが、戦争映画、昭和の庶民を描いた映画としては、背伸びをせず、原寸大で描かれているように感じました。実際当時を生きた訳ではないのですが、そう感じました。

冒頭のキャラメルを購入するシーンや家族ですいかを食べるシーンなどの平和が描かれているのを見て、このあと悲惨な空襲が来るのかと思うと、ぐっと来るものがあります。平和とは、あと一手で崩れるジェンガのように絶妙なバランスの上で成立しているのだということを実感しました。

今の日本の平和も同様なのかもしれません。

 

映画としては総じて満足のいくものでした。

のんの主人公すず役も適任だったと思います。女優として、あまちゃんでのどんくさい役からは脱しきれていない役ですが、見る人には、のんはあまちゃんのイメージが強いでしょうから、そこでののんの人となりとすずを重ね合わせる人も多いでしょう。そのイメージでもって十分に違和感なく観れました。

 

ただ、2点だけちょっと気になったことがありました。ネットで絶賛されている映画を否定的な意見を述べることは勇気がいりますが、少しだけ述べさせてください。

 

一つ目です。これは映画の問題というよりも原作の問題だと思うのですが、おそらく作者の頭の中ではつながっていても、読者がついていけていない箇所がいくつかあると思います。内容の詳細は映画を見ていただくとして、後から思えば、こういう笑いだったんだと思うところがありました。

私も経験があるのですが、自分の頭の中ではつながっていて笑えるところもそれを言葉に表すとそれがうまく表現できない。自分の中では体験したことだから分かるのだけど人に説明するとなると説明しすぎになってしまって、逆に面白さがなくなってしまいます。

 

二つ目。これは、映画や原作というか、すずに対する怒りのようなものなのですが、もっと生きることに貪欲になって欲しい。どんだけどんくさくても、生にだけはしがみついて欲しい。そう思いました。

空襲が起きた時もすぐに防空壕に入って欲しいし、ましてやとんびを追うなど本当にやめて欲しい。

ただ、当時の人たちの感覚は違ったのでしょうか。

例えば、下関に疎開をしようかというとき、徑子がはるみとすずを父親のお見舞いに行かせるシーンがあるのですが、連日空襲されているなかで、軍の病院に行くなど被害にあいに行っているようなもの。いかに当日が晴天で襲って来る可能性は相対的に低いとはいえあり得ないと思いました。そもそも、下関に行く汽車のチケットすら購入できるか不確かな場面で、長い間チケット購入待ちの列に並ぶのはありえません。街にいるということはそれだけ空襲に遭う可能性が高いということです。それならば家にいた方がよっぽど安全というものです。幸い、防空壕は家の隣にありいつでも避難ができる状態なのですから、とにかく街にいる時間は極力減らすというのは身を守るために必要な考え方でしょう。

夜な夜な空襲で起こされるシーンもありました。そういう状況で寝るよりも防空壕で寝たほうがより安全なのではないでしょうか。私ならいつ空襲が来るかわからない状態で、危険な家の中では寝ることすらできないと思います。

戦争で勝ちたいと思うならまずは生きることだと思います。なぜなら人間は戦力だからです。戦争末期には特攻が行われました。片道しか燃費を積まずに離陸し、戦死を前提とした攻撃です。人が死ねばそれだけ戦力が落ちます。だから生きなければならないのです。日本はそれを見誤った。だから負けたのです。

 

とにかく生きることに貪欲でない人たちをみて、私は憤りを隠せませんでした。

 

この2つが気になったところでした。細かなバックグラウンドや伏線など他のブログや監督のインタビューなどでも紹介されているので映画を観た後でさまざま考えを巡らし、もう一度映画館に足を運ぶと消化できる映画なのではないかなと思いました。