とある元SEの思考を探る

ひょんなことからとあるICT企業ではたらくことになったなんちゃって元SEがしたためるブログ。主に、政治・経済・社会問題・日常の出来事について発信していきます。お読みいただけたら、感動にむせび泣くほど嬉しいです。よろしくお願いします。


富士通、転職した社員も再雇用

富士通が、転職した社員も再雇用できるよう条件を緩和したそうです。

これまで勤続3年以上、退職後3年以内だった条件が勤続1年以上、退職後5年以内に緩和。また、進学、配偶者の転勤などの事由をなくし、転職した社員にも門戸を開くようにしたそうです。

www.nikkei.com

私は、以前同社に勤務していたものとしてこの制度には大賛成です。

 

私が転職を考える際、当時27歳という第2新卒ギリギリの年齢で、このまま富士通にい続けるか、それとも違う世界で自分を試してみるのか悩みました。その背中を押してくれた考え方の一つが、「また戻ることはできる」というものでした。退職の意を伝えた時、統括部長には「もう二度と富士通で働けると思うな」と言われました。しかし、私は自分が着実に能力をアップしていけば、富士通はまた必要としてくれると思ったし、当時一緒に働いている先輩方からも信頼してもらえるように働けたという多少の自信はありました(といっても必ず採用されるわけでは無いけれども)。また、今でも仕事とは関係無いところですが、富士通社員の方と定期的に会っており、富士通との関係をすべて絶つことはしないようにしていました。そして、富士通がまっとうな考えをもっていれば、いずれ、富士通は転職者にもカムバックの門戸を開くことはありうるだろうと思っていました。だからこそ転職を決意したわけですが、今回の方針転換は制限はあるものの、私が考えていたことが実現した形になりました。

 

富士通の退職エントリはたとえば、こちらのエントリなどが今年少し話題になりました。いくつかデフォルメはされていますが、私の同期のエントリです。

私が退職した理由は昨年書いたのでそちらを参考にしてもらいたいのですが、この記事を見て、まだまだ富士通は生き残る可能性を秘めた会社だなと思いました。

 

富士通のいいところは何と言ってもその社員であると思います。

グループ会社も合わせると、全世界で10万人を超える社員がいる会社ですから、必ずしも全員が優秀であるとは言えませんし、私の同期や、同社のBPさんの話を聞くと富士通社員に対する不満もちらほら聞かれます。

しかし、少なくとも私がいた部署に関しては、どのメンバーも人間的に成熟した方が多く、謙虚さも持ち合わせていました。

確かに向上心を持った人はあまり多くなかったかもしれませんが、長時間残業も厭わず、プロジェクトの完遂に向けてなんとかやりきる人が多かったように思います。

ただいかんせん、ITで世の中を良くすることに対する情熱が少ない社員も多く、まさしく大企業で歯車として働く社員が多かったように思います。

 

転職から1年経って、今の会社だけでなく、勉強会等で他のWeb系企業の社員と比較して、そもそも彼らと富士通社員は人間的な性質が違うということを改めて実感しました。

私は、変化の激しいIT業界のなかで、富士通のように10年前の開発標準を未だに用い、新しい技術の導入に対して抵抗感をあらわにし、高効率の開発を拒む風潮は、いずれ淘汰されるであろうと思っています。

しかし、スタートアップやベンチャーのようなある意味で不安定で、まだまだ信頼性が担保されない企業が富士通やNTT、ユニシスNRI等々の大手SIerと同等に信頼を勝ち取っていくには時間がかかることです。

ここで、そうしたSIerが従来のウォーターフォール型の開発だけでなく、Web系の開発の良いところも積極的に取り入れ、高効率な開発を実現し、今のように炎上案件にとりあえず人をつぎ込んで札束で鎮火させるような力技をなくしていけば、十分に競争力があると思います。

ただし、そうしたことは今富士通の中で安住している人々は、外の世界を知らないが故に実現することは容易では無いでしょう。そこで、この記事のように富士通を退職し、他の現場で富士通と違った開発を経験した元社員を再雇用することで、従来の非効率な開発を改めることが求められますし、このことも退職した社員を再雇用することで富士通が得られる効果の一つでしょう。

私は、そこに期待したいです。

富士通の外で働いたことがあれば、例えはAWSがどの点でK5に勝り、劣っているのかということがわかります。それは、圧倒的危機感を感じるものであるでしょう。その危機感こそがビジネスの原動力になりえます。

 

とにもかくにも、今回の富士通の方針転換は、すでに富士通を転職した社員だけでなく、現社員にも良い影響をもたらすと思います。富士通という組織の中では学べないことは沢山あります。一度外の世界をみることは、その人のキャリアの幅を広げることになるでしょう。そして、富士通に戻ってくるパスが用意されているとなれば、その挑戦はしやすくなります。

一生富士通で終わるのか、それとも富士通外で経験を積み、自分の幅を広げるのか、今回の方針転換で、富士通富士通だけでなく、社員にも成長機会を与えることつながると思います。

 

退職はしましたが、嫌いな会社というわけではないですし、知り合いもたくさんいます。外国の方と喋っていると富士通という会社名は知っている方が結構います(空調機のイメージかもしれませんが・・・)。道端で警察に職場を聞かれた時も「富士通」と言ってちゃんとした人だなと思われたりもしました。こうしたことは、元社員としては少し誇りに思います。

電機業界やSI業界は斜陽産業ではありますが、他社に先駆けてこうした制度を作ることで、良い方向に向かえば良いなと思います。