とある元SEの思考を探る

ひょんなことからとあるICT企業ではたらくことになったなんちゃって元SEがしたためるブログ。主に、政治・経済・社会問題・日常の出来事について発信していきます。お読みいただけたら、感動にむせび泣くほど嬉しいです。よろしくお願いします。

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裁量労働制だからといっていくらでも働かせて良いわけではない

半年ほど前に大手SIerから従業人数100名にも満たない小さなWeb系企業に転職した。

今の会社ではエンジニアは全員裁量労働制。何時に出社しても良いし、何時に帰ってもいいとても自由な働き方だ。家で仕事をすることもある。

前職のSIerにいるときに裁量労働制を望んでいた者として裁量労働制は望んでいた働き方だ。

よくSIer裁量労働制というと、残業代なしでたくさん働かせることのできる制度として会社に利用されているという悪いイメージがある。しかし、私が今のWeb系の会社に入社した時点ではそのようなことはなく、あくまで自社サービスなので、エンドは決まっていても無理なら先延ばしするというのはよくあることだった。

しかし、最近になって、このプロジェクトはいついつまでにリリースしたいなど納期の希望がエンジニア以外から出てくるようになった。

裁量労働制というのは、前提として労働者が裁量を持って仕事ができることが前提となる。SIer裁量労働制がうまくいかないのは、納期があるからで、お客さんがいるからである。この日までにリリースしなければいけないという状況にあるので、労働者は自分の裁量で仕事はできない。これでは裁量労働制がうまくいくはずがない。

今の私の会社はエンジニアでない経営陣からこの日までにリリースして欲しいという要望がある状態。まさしく社内受託。

結論から言うと、そのスケジュールは頑張れば、できないことではない。

しかし、私はどう考えてもおかしいと思いが積もり、上司と社長にはっきりと申し上げた。

この待遇とこのスケジュールでは完遂することはできないと。

どう考えても、最低60時間ぐらいは残業しないと厳しそうなのだ。今の私の給与は同じ年齢で比べても少ない方。でもそれは、裁量労働制という比較的自由な働き方をさせてもらっているので許容できる給与額だ。そこに強制的にエンドの決まった仕事を持ち込まれては、裁量など存在しない。これは裁量労働制ないと思う。

 

2011年に京都地裁での判決がとある弁護士の方のブログで紹介されていた。

tenmalaw.exblog.jp

引用させていただくと、

 確かに、本来、専門職型裁量労働は、業務の専門性のゆえに、業務の遂行方法を労働者の裁量に大幅に委ねざるを得ないため、使用者が業務の遂行手段や時間配分を具体的に指示しないことが予定されている。したがって、厳しいノルマや納期が命じられていたため、業務遂行手段や時間配分に裁量の余地がなかったのであれば、裁量労働制が本来予定している場面ではないともいえよう。 

 しかし、まだ余り論じられていない問題ではあるが、業務遂行手段や時間配分について具体的な指示がなされており、裁量の余地が少なかった場合であっても、それは、単にその具体的な業務上の指示が無効となるだけであり、裁量労働制の適用そのものが無効となるわけではないという意見も有力に主張されている。

 とあるので、この問題は実際はまだまだ微妙な問題なのかもしれない。しかし、私は会社の中での自浄作用が働いて経営陣が進んで従業員のことを思い、自主的に改善する方が望ましいと思ったので、以下の2つのいずれかにしてほしいというお願いをした。

 1. プロジェクトのエンドを3週間〜1ヶ月延長する

 2. エンドは変えない。しかし所定労働時間(1日8時間)を超える部分は残業代を支払う & 休日出勤を許可する

この二つのどちらかにして欲しいとお願いをした。

ここでポイントは、エンドはあっても良いということだ。しかし、そのエンドは裁量労働の対象となる労働者が決めるということ。これであれば、自分で裁量を持って決定したことであるから、裁量労働制は当てはまるであろう。

あるいは、裁量労働制でなくする。エンドを裁量労働制の対象となる人以外が決めるのであれば、裁量はなくなるので、残業代も払う。休日出勤も許可して何としてでも納期に間に合わせる。

もし同年齢の同程度、或はやや多いぐらいの給与水準であれば、私は頑張ろうと思った。しかし、同年齢よりも少ない給与しかもらっていない上、エンドを決めた仕事をさせる(=残業をさせる)というのは許容できない。

給与というのはすなわち評価である。平均よりも極めて少ない給与しかもらっていない私はそんなに役に立たない人間なのか。役に立たない人間ならば、なぜ採用したのか。上司に聞くと決してそんなわけではないという。ちゃんと戦力としてみているという。しかし私は思う。口先ではいくらでもなんとでも言える。会社員には給与という明確な数値がある。これが全てだ。平均以下の人材という評価を下されている厳然たる事実。そんな状態でどうやってモチベーションを持って働けるだろうか。その上、残業まで強要しようとしている。

エンジニアはただの労働力なのか。安く働かせることのできる代わりの聞く存在なのか。

私はどうしてもこの給与で納期の厳しい仕事を完遂することはできないと本能的に思った。いや、これを許容してはいけないと思った。もともと私は自分を安く売ってしまう傾向がある。ちょっとしたことなら、タダで引き受けることもある。しかし、今回ばかりは我慢できなかった。これ以上自分を安く売ることに耐えきれなかった。それはエンジニアとして、プロとしての絶対に譲れないラインだったからだと思う。

 

経営者に言いたい。従業員を不当に安い給与で働かせるのはやめた方が良いと。私はまだ上司や社長に直接言うことができたが、環境上そうはいかない人もいるだろう。性格的に言えない人もいるだろう。

自分一人で考え込んでしまってうつになってしまうかもしれない。あるいは、逆に会社を破壊してやろうと思うかもしれない。エンジニアならば、直接顧客情報を引き出すことができる。コマンド一つで個人情報を入手することもできるだろう。ベネッセの個人情報流失のような事件が自分の会社で起きる可能性だってある。経営者はそれを常に考えるべきだ。

そして、優秀な人材を採用するなら、最低限平均給与以上の給与を支払うべきだ。平均以下の給与しか支払わないのであれば、それは平均以下の能力の人を採用していると考えるべきだ。仕事によっては平均以下の能力でも良い仕事もあるだろう。そういう場合は、平均以下でも構わないが、「優秀な人材が欲しい!」という場合の採用ならば、平均給与以上の給与を支払うべきだ。そうでなければ、労働者から見れば、「不当に安い給与で働かされている」と思うであろう。いくら口でそうではないと言っても給与という目に見える数値があるのだからその事実は曲げられない。

 

私は今の職場には一定程度満足している。決して給与は高くないが、自由な労働時間で働けるし、職場の人間関係も悪くない。だけれどもそれは、エンジニアに裁量が与えられているから言えることである。エンドが決まっていないか、一応は決まっていても融通がきく状況であるからである。

その前提が崩れるのであれば、私は言うべきことは言っていかないといけないと思って今回上司と社長に伝えた。

まだ返事はもらっていないが、今の会社が気に入っているのでおかしくならなって崩壊してしまう前になんとかしたいと思ったからだ。

事態が好転することを期待して本日はここで筆を置きたいと思う。