とある元SEの思考を探る

ひょんなことからとあるICT企業ではたらくことになったなんちゃって元SEがしたためるブログ。主に、政治・経済・社会問題・日常の出来事について発信していきます。お読みいただけたら、感動にむせび泣くほど嬉しいです。よろしくお願いします。


新卒で入社した会社を辞めました

このブログではあまりお伝えしていませんでしたが、8月20日付で1年と4.67ヵ月働いたF社を退職しました。私は生粋の会社員なので、伏字で失礼します。退職するときに念書みたいなのを書いて会社の事はしゃべらないと誓ってしまったので伏字(過去の記事読んでいた人ならわかる)。こういうところがどっかの高知在住の人からは「つまらない」と一言で片づけられてしまうんでしょうが、気にしません。

 

なんで今頃退職ブログを書いているのかというと、転職前後は精神的に落ち込みすぎてそれどころじゃなかったから。前職がすごく働きやすい会社だったし、安定もあったので、この安定を捨てて良いのか!という葛藤と、新しい会社では今までやったことのないことをやるので、やっていけるのか!という不安が入り乱れ、引っ越しなどの生活環境の変化も相まって精神的に不安定な時期を過ごしていました。意気揚々と転職ブログを書けるほど私のメンタルは強くないということです。

 

なお、7000文字ぐらいある長文ですので、ご注意ください。

 

なぜ退職を決意したか

1.先が見えてしまった

もうね、先が見えてしまったんですよ。前職はグループ会社も合わせると世界で13万人ほどの従業員がいる会社でした。もう入った瞬間からある程度のレールにのっかっているわけです。私が配属された部署の統括部長は、私が配属された数か月後に役職定年となり、1年ほど同じ部署で働いたのち、グループ会社に出向。これはもう本人の意思とか関係のない力学が働いて決まります。なんかこんな誰かに自分の先行きがコントロールされてしまう人生は自分は嫌だなと思ったし、もっというと、それについて何とも思わずに仕事をしている先輩方にもびっくりしました。

 

2.スキルがつきにくい

前職はSIerでした。日本のSI業界は建設業界のそれと同じくピラミッド型をしており、私が入社した会社は、ピラミッドの頂点に位置する会社です。その下には私が知らないくらいたくさんのグループ会社があり、そのグループ会社の下にはさらに多くのSE会社がいて、その下には(以下略という感じです。私がやっていた仕事というのは基本的にはグループ会社の進捗の管理。マネージメントと言えば聞こえがいいですが、進捗は往々にして遅れ、「なんで遅れたの?」「回避策は?」というのを時には厳しく追及する仕事。これでは、スキルなんてつかないし、そもそも自分のできない技術的なことを任せて出来なかったら追及するというのは私の性にあっていないように感じました。私は、若い時には現場でコードを書いて土台をつくりたいと思っていました。

 

3.結局、前職は人間力だった

前職で必要とされていたのは、技術的なスキルではなく、人間力でした。私が最後に関わったプロジェクトは、炎上していて、自分が所属する部ではなく隣の部のヘルプという形で仕事をしていました。ここでの仕事は、開発するシステム、業務を学び、開発が遅れないようにテストのスケジュールやテストシナリオ、テストの観点を作成。それを各BPさん(ビジネスパートナー。発注先の事をこう呼ぶ)に割り振り、きちんと進んでいるか、困っていることはないかを聞いて、それを他のBPさんとも調整し、進めていくということでした。しかし、さすが炎上案件。納期的に厳しいものをBPさんにお願いするわけです。ふつう、発注する会社は大きい態度で高圧的と思われがちですが、そのプロジェクトでは「高圧的は禁止!」の下、BPさんに丁重にお願いするのが基本でした。その為には、BPさんよりも早く帰らない。遅くまで残って仕事をする。休日でも出社する。といったことをしなければなりませんでした。お願いするときも、優しく。むしろ、私の方がいろいろ責められることもありましたが、そこはぐっとこらえて平謝り。人間力の必要とする仕事でしたが、こんな仕事をずっと続けていていいのかなという不安がありました。

 

4.何も言われない

2年目の途中で辞めたわけですが、この間、先輩からはほとんど何も言われませんでした。自分が必要かなと思うことを自分でやっていく。最後に配属されたプロジェクトではやることがたくさんあったし、BPさんも含め同じ部屋にいたので色々見えました。しかし、その前のプロジェクトは基本的にやりとりはリモート。私の知らないところで先輩が色々とプロジェクトを進めていきます。新人が受けなければいけない研修もあっていないときもあったとはいえ、仕事をしている実感はありませんでした。ただいるだけ。ただ、打ち合わせスペースを予約するだけ。会議に参加するだけ。もちろん、その中から学べることはありましたが、自分で手を動かしたほうが学びが多いのは自明です。大企業であれば年次で任せる仕事が決まっていて、あまり自分が手を出せる範囲が少ないなと感じました。

 

5.開発が10年前

IT企業といえば、最先端の技術を駆使して!というイメージがあるかもしれませんが、全く違っていました。進捗管理は基本エクセルベース。進捗管理表を編集するのにロックがかかっていて編集できないとか、いつの時代の話だろうという感じでした。

また、最近ではテスト駆動開発といって、テストを書くことから開発を始めるという手法があります。テストを書くことは、すなわち、そのシステムの仕様を決めるということです。もっと言うと、テストコードそのものが、設計書になりうる。そういう開発手法があって、私はテストコードを書くことは必要なことだと思っています。何しろ、テストコードを書いておけば、新たに機能を追加したときとか、ソースコードをいじったときに、テストを回せばこれまでの仕様通りの動きになっているかとか、すぐ分かりますから、テスト工程の短縮につながり、継続的に保守していくには必要なことだからです。

前職でテストコードを書くなんてことはどこのBPさんもほとんどやっていませんでした。継続的インテグレーション(CI)という概念は知っていてもやらない。さらに言うと、旧来型のウォーターフォール型の開発しか知らないものだから、現代のように要件が逐一変わる、あるいは要件が不確定な状況下での開発でもウォーターフォール型を当てはめようとします。もう少しフレキシブルに考え、これまでの成功体験を捨てて新たな開発手法をどんどん取り入れていくべきだと思いました。

しかし、前職では、20年前とか30年前に入社した人が部長とかになっていて、そのような新しい開発手法の概念を取り入れようとしませんし、そもそも、目の前の業務が忙しすぎて、その余裕すらありません。さらに、そうしたフレキシブルな考え方を世界中で13万人もいる会社全体に波及させようと思うと気が遠くなります。私にはそれよりもSI部隊全員が時代に取り残されて崩壊してしまうイメージが強く残りました。

 

6.官需依存

開発が10年前にもかかわらず、やはり歴史のある企業ということで、官公庁や地方公共団体といった行政からの受注が多いです。そうした組織はぽっとでのベンチャー外資に頼むよりも日本の大企業に任せる方が安心と感じるのでしょう。会社全体の売り上げの75%はSIで、その7割ぐらいが官公庁や行政といった分野です。前職の会社から官需を抜いたらほとんどすっからかんです。裏を返せば、民間企業相手にはまったく競争力がないということの表れでしょう。SIの技術的に他社を圧倒していて見込みのあるのであればまだしも、10年前の開発を未だに引きずったまま官需依存で会社がもっているのを考えると、あまり明るい未来を描けませんでした。

 

前職で良かったこと

1.みんな良い人

働きやすさはかなりありました。炎上プロジェクトでしたが、関西人がいるからかいつも笑いが絶えない雰囲気でした。定期的にイベントもあり、駅伝、フットサル、ソフトボールなどで上司ともコミュニケ―ションをとることができ、楽しかったです。

 

2.安心感

やっぱりそうそうは潰れないだろうという安心感があります。業績が傾いても、本体社員は容易には首を切らないだろうという安心感もあります。世間的にもそういう評価でローンとかは審査が通りやすいと思います。

 

3.福利厚生

大企業の中では決して福利厚生が良いというわけではありませんが、腐っても大企業です。その辺の中小企業よりは福利厚生は良かったと思います。入社3か月で年休が20日どかんと付与されます。現職は入社半年後に10日付与です(法律の最低限の日数)。寮もあります。月1.5万円(光熱費込)で入ってました。そのほか、医療保険とか、企業型401kとかいろいろあります。

 

正直、こうした安定、守られている感はすごくありました。転職前の1週間は本当にこうした安定を捨てて良いのか、土下座してでも取り消した方が良いのではないかとも思ったほどです。

 

 

新しい会社はどうか

前職を退職した翌日から新しい会社で働き始めました。会社は創業10周年のまだまだ若い会社です。ここ数年で人数を増やしてきたので入社年数が少ない社員が多いです。

1.今までやったことのない言語、開発環境

前職ではJavaを使っていて、環境はEclipseという統合開発環境(IDE)でした。OSはWindows。それが言語はRuby on Railsに変わり、開発環境はvim、OSはMacです。何もかも変わりました。RubyJavaオブジェクト指向とはいえ、全然違います。オブジェクト指向型言語の中でも対極にいる二者なのではないでしょうか。vimもviは少し使ったことはありましたが、少し修正する程度。バリバリ開発で使うことはしませんでした。設定ファイル(~/.vimrc)すら知らず、先輩に教えてもらう始末。

ただ、RubyRailsは一度ちゃんと勉強してみたかったので、本当にいい経験をしていると思います。テストはRSpecを使っていて、開発としては前職よりもあるべき姿に近いと思います。

 

2.裁量労働制

今のところ、開発部は裁量労働制でいつ来てもいつ帰っても問題ありません。私は、仕事が無い時には早く帰れるべきだと思っていたので、裁量労働制は好きです。また、私は仕事が遅いですが、自分のペースで仕事ができるのもありがたいです。前職では残業時間なると、ここで残業代が発生しているんだと思って残業時間帯の作業に集中できなかったりもしましたが、裁量労働制ならばそんなことはありません。個々人がプロ意識をもってやれる組織ならば裁量労働制は良いと思います。

 

3.年齢に関係なく仕事をする

年齢とか関係ないです。びっくりするぐらい。年齢よりも入社年数の方が重要になってきます。中途の人が多いのでこれは当たり前かもしれません。ただ、人が少ない分、一人がやらなければいけない仕事の種類は多いです。例えばシステムを作るときは、要件定義から外部設計、内部設計、実装、テストといくつかのフェーズがあるのですが、前職では分かれていることがほとんどでした。しかし、現職では、要件定義は他部署の人とも会話しながら進めるとして、その他はすべて一人で行います。(もちろん分からないことは先輩にも聞きながら)できなければいけないことはやはり多いです。

また、積極的に採用もしているのですが、この前は採用の面接も行いました。まだ試用期間なのですが、これも前職では経験できなかったことです。しかも中国人で、日本語の聞き取りはできてもあまりしゃべれない感じで、8割ぐらい英語でしゃべってきました。開発部は私と先輩の二人、プラス人事部(新卒入社)という3人で面接をしたのですが、この3人の中では英語と技術的なことの両方が分かるという立ち位置だったんだと思います。前職ではTOEIC600点以上を求めておきながら、全く使う機会のなかった英語ですが、現職ではいきなり使う羽目になりました。このあたりも、前職とは違って仕事の幅が広いのが小さな会社のメリットだと思います。

(なお、私の英語力はひどいものでノリで乗り切りました)

 

4.経営者が見える

前職は社長と会うことなんてありませんでした。役員も見たことがありません。しかし、今の会社は社長がすぐそこに座っています。というか、一番下座にいます。一般社員と見分けがつきません。私はもともと社長の見える会社で働きたい!と思っていたので、その点では良かったと思います。

社長とご飯を食べに行くこともありますし、一兵卒としては、経営者の思いをじかに聞けると言うのは仕事のモチベーションに繋がります。

 

5.できないことが多すぎて日々勉強

前職では、基本的に人間力を必要とされていたため、そういう意味では(研修は除いて)仕事の中で新しいことを身に着けた!という実感はなかったのですが、現職では知らない言語での開発ということもあるし、海外展開に向けた開発、SEOなど前職では必要としなかった仕事がほとんどです。知らないことばかりなので日々勉強しながら仕事をしている感じです。まわりもそうです。手探りの中での仕事は怖さと楽しさが混在し不思議な感覚です。

 

つらいことはないのか

1.Macが分からな過ぎてつらい

大学の時授業で使って以来、Macを使いました。リロードがF5じゃなくてググりました。カタカナ変換とかもググりました。いろいろググりました。

(なお、最近では、家のパソコンがWindowsで使いづらいのでイライラするぐらいMacに慣れた模様)

 

2.Ruby on Rails分からな過ぎてつらい

Javaは前職の時に勉強してある程度できたのですが、RoRは初めて。正直、フレームワークが強力過ぎてなんかおまじないみたいなメソッドもあったりしてびっくりしました。テストコードを書くためにRSpecも勉強しなければいけないし、フロントエンドでは、CoffeeScriptとかJavaScriptフレームワークであるKnockout.jsも使っているので、もう学ばなきゃいけないこと沢山です。

 

3.vimが分からな過ぎてつらい

開発は基本的にvimなのですが、vimは設定ファイル(~/.vimrc)で色々設定したり、NeoBundleとかをインストールすると統合開発環境IDE)に近いぐらい強力なツールになります。最初しらなくて、色々と困りました。.vimrcを丸ごともらって自分でカスタマイズして覚えました。

 

4.仕事の仕方が分からな過ぎてつらい

仕事の回し方が全然わからないわけです。だれがどういう仕事をしているかとか、もう全然わかりません。これは本当に古参の人に聞くしかありません。今ではだいぶわかるようになりました。

 

5.まわりの人が優秀すぎてつらい

前職の頃より、優秀な人の割合が高いです!これはもう間違いなく!学歴とか関係ないです。前職ではこの人なにやってるんだろう的な人もいましたが、今の会社はいません。というか優秀な人が多くてこの中で自分がやっていけるのだろうかと思うとつらいです。このつらさは今でも感じています。ただ、エンジニアの中でもそれぞれ個性があるので、自分はその隙間を縫って自分なりの立ち位置を確保していけたらなと思います。

 

6.福利厚生がなくてつらい

前職みたいな福利厚生はありません。確定拠出年金も企業型401kから個人型401kに移しました。寮もないので一人暮らしです。年収は、前職で残業ゼロのときと変わらない感じですが、一人暮らしのアパート代とか光熱費とかを考えると生活は以前より苦しいです。ただ、その苦しさが将来につながると信じて頑張るしかないです。

 

1~4は時間が解決してくれる問題だと思いました。5は、これから自分がスキルをみにつけていくしかありません。働き方としてはあるべき働き方だと感じているので、もうあとは自分が頑張るしかないという感じです。

 

まとめ

前職は仕事がつらいと思ったことはありませんでした。むしろ、物足りなさを感じていました。深夜残業が続くときもありましたが、その時も体力的にはきつかったですが、仕事が嫌だとは思っていませんでした。だけど、辞めたいと思ってしまいました。自分があまり成長しないなと感じたからです。

今は仕事が少しつらいです。まだ慣れていないということもあると思います。だけど、学ぶことが多くて、日々自分の成長を感じられているし、まわりも刺激的な人が多いので、つらいけど辞めたいとは思わないです。まだまだこの会社でやりきっていない!やりきったと思ったらそこが辞めるときなのかなと思います。

新卒で入社した会社はIT系で、学生の頃電気化学実験ばかりしていた自分から見れば本当に畑違いな職でした。今も前職の知識も生かしつつも、全く新しい環境に身を置いています。

最近、知人に勧められて植松努さんのTEDを見ました。植松さんは「できないことをできるようにするのが仕事」なんだと言っていました。そういう意味では、自分はできないことをしてきたんだなと思います。やったことのないことをやるのは正直つらいです。何度も落ち込みました。だけど、これも自分で決めた道です。つらいけどやるしかない。そういう気持ちです。


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