とある元SEの思考を探る

ひょんなことからとあるICT企業ではたらくことになったなんちゃって元SEがしたためるブログ。主に、政治・経済・社会問題・日常の出来事について発信していきます。お読みいただけたら、感動にむせび泣くほど嬉しいです。よろしくお願いします。


理系4人が地震に遭遇するとこうなる

この土日は大学時代のサークルの仲間とOBOG合宿。

 

場所は、上総一ノ宮。

 

ときはちょうど5月30日。M8.5(注1)の地震が20時24分に起こった日だ。

 

その時は、夕食が終わり、21時からの飲み会に向けて、部屋で休んでいるときだった。

始め小さな揺れがあり、

「あー、地震だねー」

地震だねー」

というありきりな会話をしていると、明らかに体に感じる揺れが長く続く。

東日本大震災ほどじゃないが、長い揺れ。

これはまた離れたところで大きな地震なのではないかとすぐにテレビをつけ、NHKにチャンネルをあわせた。上総一ノ宮は海岸からも近いため、津波の心配もあった。

そのときは、「凄ワザ」を放送したが、ニュースに切り替わり、地震の報道に入った。

報道では、震源は、小笠原沖で地震の規模を示すマグニチュードは8.5(注1)、震源の深さは590 km(注2)であると報道された。津波の心配はないという。

 

そして、そこに居合わせたのは、東大卒理系4人。簡単に紹介すると、

 

A氏:東大院薬学系研究科修士卒。製薬会社の研究職。4人の中で最も頭が良い。

B氏:東大院理物修士卒。博士中退。某電気系メーカにて研究職。

C氏:東大教養学部後期課程数理科学分科卒。証券会社で自社のシステム開発

俺氏:東大院工学系研究科修士卒。某SIerにてシステムエンジニア

 

ちなみに高校、大学では4人とも地学は選択していないので、地学に関する知識は中学レベルである。

 

震央から遠い方が震度が大きい問題

まずは話題に上がったのは、震度の分布。小笠原沖が震源ということで、近い千葉の方が、埼玉よりも揺れは大きいはず。しかし、上総一ノ宮付近は震度3で、埼玉は震度5弱だという。

f:id:smartenergy:20150531221228p:plain図1.震度の分布
(出典:http://www.jma.go.jp/jma/press/1505/30b/kaisetsu201505302230.pdf

 

なぜこの様な一見不可解な現象が起きるのかということだ。

A氏「なんで埼玉の方が遠いのに、ここより震度大きいんだろう。なんか負けた気分だね」

B氏「なんでだろうね。」

俺氏「震源が深かったからじゃない?590 kmって結構深いよ」

A氏「そうか、震源が深いほど震央と距離が遠くても、震源との距離の差が小さくなるから、震央との距離と相関しにくくなるんだ」

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図2.震源1よりも震源2が深いとき、a1/b1 < a2/b2 となっていることがこの図からも簡単に確認できる。

 

それでもまだ震央からの距離が遠い方が、震源からの距離も遠いという問題になるが、地盤の状態にもよるということで、この話は一件落着した。

 

震源はどうやって特定するのか問題

つづいて、そもそも、震源はどうやって特定するのか問題。

俺氏「P波とS波の速度の違いで分かるんじゃん?中学の時やったみたいに」

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図3.P波とS波、初期微動継続時間、主要動について
(出典:http://blog.livedoor.jp/aritouch/archives/2013-03.html

 

A氏「そうだね。だったら、3点あれば震源が特定できるのか」

(ここがA氏の頭の回転の速さ。すごい)

俺氏「そうーなのか。。(よく分かってない)」

 

B氏「2点でいけるんじゃね?」

俺氏「んー、精度の問題もあるとは思うけど(やっぱりよく分かってない)」

A氏「いや、2点だと、曲線になって決まらないからやっぱり3点必要だよ」

 

少し説明を付け加えよう。

先ほどの図を見ればわかるように、初期微動継続時間の長さは、震源からの距離に比例する。そして、2点あれば、P波とS波の速度が分かるので、その地点の震源までの距離を求めることができる。

B氏が2点で良いと思ったのは、2次元で考えたからである。

次の図を見てもらいたい。

f:id:smartenergy:20150531224009p:plain図4.2次元で考えた場合の震源

 

図2から、A地点、B地点から、震源までの距離がわかり、それを円で描くとこの図ようになる。この交わった点が震源となるわけだ。

 

しかし、これはあくまで2次元。実際は、この半円は半球である。従って、実際は、二つの半球の交わりは、曲線となる。

これでは震源は求まらない。

したがって、3点目が必要なのである。

f:id:smartenergy:20150531224606g:plain

図5.3次元で考える必要がある。
(出典:http://www.jma-net.go.jp/ishigaki/school/200301/jisin01.htm

 

というわけで、震源をどうやって求めるのかも一件落着。

すっきりしたー。

 

と、話はここで終わらない。

 

距離が離れていると1点に決まらない問題

しかし、ここでさらにA氏が・・・。

A氏「距離が離れていると半円じゃなくなってくるから決まらなくね?」

つまり、距離が離れてくると、地球の曲線が無視できなくなるというわけだ。

2次元で見た方が分かりやすいので、次の図を見てもらいたい。円が2点交わっている。

f:id:smartenergy:20150531225548p:plain

ん~これはなかなか奥が深い。

こういうことをさらっと出てきてしまうA氏はさすが頭の回転が速い。

 

理系4人が地震に遭遇するとこうなるという例でした。

文系女性の前でしゃべるとすぐに嫌われる会話ですね。

 

本日も、ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

 

P.S.

あとから部屋に来た後輩(文系。弁護士。地学選択)が、

「大森公式でしょ」

との一言。地学選択でない私たちは当然知りませんでした。

しかし、この高々20分で導いた震源特定方法が、立派な公式として存在するとは。。

もちろん、大森さんの公式はこれだけではないのでしょうが、昔であればあるほど、今では当たり前のことを説明しただけで、後世に名を残すことができるわけですね。。

逆に今成果をあげて、ノーベル賞とったりすれば、かなり複雑な場合も多々あるわけで、そりゃあノーベル物理学賞とかがどういう成果かなんて専門でない人はわかるわっきゃないですよね。。

 

注1;その後、M8.1に修正。

注2;その後、682 kmに修正。